kirakira
00:04:15
ピーター・S・ビーグルの「完全版 最後のユニコーン」を読了。

読み終わった感想として何を言えばいいものか難しい。
というのも、この「最後のユニコーン」は、ストーリー自体は御伽噺的なファンタジーなのですが、作品の本質は随所にちりばめられたメタ・ファンタジーとしての面にあると思え、それこそこの作品を傑作たらしめている部分ではないかと。

作中で一番印象に残った台詞。

「豚飼いが、冒険の旅に出る前に姫と結婚しているということはありえない。魔女が休暇で出かけているときに、少年が魔女の家を訪ねるということもありえない。邪な心をもった伯父が、まだ何も悪いことをしていないうちにみつけられて企みをくじかれるということもありえない。ものごとは起こるべきときに起こる。冒険の旅はただやめるといってやめていいものではない。予言は、収穫し忘れられた果物のように、腐るまで放置されてはならない。ユニコーンが長いこと救われずにいるということはあってもいいが、それが永遠に続いてはならない。ハッピーエンドは物語の途中で起こってはならないのだ」

これはこの作品の要点を集約しているように考えられます。
訳者あとがきの一文を借りるなら、作中の登場人物たちは、このいかにもファンタジー的なファンタジーの物語の登場人物でありながら、ときどき物語の枠の外に立って、この現在進行形のファンタジーのなかの「物語」や「冒険」について意見を述べるのである。
赤い雄牛とユニコーンとの対決の場面で、モリーが唐突にその光景を人形劇として上から見ているという描写が入るのは何とも意味深。

この完全版には、最後のユニコーン執筆から30年以上もたって書かれた後日談である中編「ふたつの心臓」が収録されていますが、その前書きの冒頭で著者は最後のユニコーンについてこう語ってます。

「友人や家族やファンの人たちから何年にもわたってしつこく『最後のユニコーン』の続編を書けとせっつかれてきた。そのたびに、わたしはこんなふうに答えてきた。「無理だよ。『最後のユニコーン』はあれでおしまいなんだから。そもそもあの作品は古典的なヨーロッパのフェアリーテールへの愛をこめたパロディであり、ジェイムズ・スティーヴンズ、ロード・ダンセイニ、T・H・ホワイト、ジェイムズ・サーバーといった、わたしがかけがえのない影響を受けた作家に対するオマージュだったんだ。(後略)」

ここでダンセイニの名前が出てくるとは。そういえば『エルフランドの王女』にもユニコーンが出てきたなあ。他の生物たちからは妬まれていて、第二の主人公に獲物として狩られちゃったりする、珍しい役どころですが。『影の谷物語』ではモラーノが馬の舌をユニコーンの舌と思い違いするくだりもありますな。

で、最後のユニコーンの後日談といえる「ふたつの心臓」では、シュメントリック、モリー、リーア王のその後が描かれているのですが……この話で、年老いたリーア王は物語の英雄としての役割を全うしてグリフィンと戦い命を落とします。その最期にユニコーンと再会できたのは幸せなことだったのかどうかわかりませんが、なんとも切ない。

ところでこの作者、まだ存命なのね。1939年生まれということは現在72歳ですか、なるほど。

この本を読み始めたとき冒頭の部分ではきれいな雰囲気だと思ったけれど、登場人物たちが集まりだして台詞を交わし始めると、ああ、「心地よく秘密めいたところ」の著者だなあと感じました。

私の好みには合いませんでしたが、余韻の残る感慨深い作品でした。
kirakira
kirakira
コメント
コメントの投稿










トラックバック
トラックバックURL
→http://kadasu.blog10.fc2.com/tb.php/1908-79226986
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
kirakira
kirakira
プロフィール

皇帝栄ちゃん

Author:皇帝栄ちゃん

クトゥルー神話、ロード・ダンセイニやアルジャナン・ブラックウッドの小説、一昔前の海外怪奇幻想小説、織田作之助、アシジの聖フランシスコなどが好きな這いまわる偽善者。永遠属性持ち。ハッピーエンド至上主義。

東方は早苗さん好きで、霊夢と早苗のカップリングがお気に入り。アイマスは橘ありす好きで、ありすと幸子のカプがお気に入り。


新刊「カワイイボクとファーストキス」とらのあな様にて委託販売中。



メールフォーム

kirakira
kirakira
検索フォーム
kirakira
kirakira
月別アーカイブ
kirakira
kirakira
QRコード
QRコード
kirakira