kirakira
15:54:21
ロード・ダンセイニ「賢女の呪い」を読了。

ストーリー的には、魔女っ子アニメのエピソードで大抵ひとつはある「子供たちの公園や自然の遊び場が開発事業に取り壊されようとしているのを魔法の力で阻止する」タイプの内容。ただし、こちらは魔女っ子ではなく老齢の魔女であり、古の異教のおそるべき超自然の力だ。賢女マーリン婦人はティル・ナ・ノーグの女王たちと契約を交わし、命と引き換えの凄絶な呪いでアイルランドの湿原を守り通すのである。

ダンセイニらしく機械文明の醜悪さや現代文明批判がこめられているのと同時に、自然や太古の神秘への賛美と畏れが見事に描かれている。なにより文章描写が非常に美しい。これこそダンセイニである。
ただ同じアイルランドを題材とした長編では「ロリーとブラン」のほうが圧倒的に私の心を捉えている。「賢女の呪い」は話の半分近くが狩猟に費やされているため、狩りに興味のない私にはそのあたりが結構退屈だった。狩りの部分を殆どカットして中篇くらいの長さにしてくれればよかったのにと感じてしまう。

さて、私が「賢女の呪い」で非常に感銘を受けたのはキリスト教関連の畏敬描写だ。
この作品ではアイルランド神話における永遠の青春の理想郷ティル・ナ・ノーグの憧憬と、キリスト教の天国や魂の救済が一つのテーマとして描かれている。キリスト教側でありながら異教の理想郷に強く惹かれる主人公の心の揺れ具合が何度も表現されるのだ。最終的に主人公をキリスト教側に繋ぎ止めるのは医者の先生なのだが、そのときの理屈が面白くてなかなか気に入っている。ティル・ナ・ノーグ伝説に教会は総攻撃を仕掛けてからくも勝利をした。敗者に関わるとろくなことがないからというものである。
それはともかく、感銘を受けた部分を述べよう。

主人公の父を暗殺するため政治組織から四人の男が送り込まれた。父の行方を聞き出すため四人の暗殺者は銃を構えて主人公を脅すのだが、主人公が聖十字架を持ち出すと、男たちは跪づいた。そして主人公は男たちに二度と父を襲わないようにと聖十字架にかけて誓わせるのだ。誰一人として笑い飛ばしはしない。リーダーの男は「誓ったらそのとおりにしなくてはいけなくなる」と拒否したが、最後には誓った。そして男たちは誓いのとおり、決して主人公の父を襲うことはなかった。それどころか、男の一人は組織から父の暗殺を再度命令されたが誓いを守って拒否し、殺されたのだ。そう、組織に属する暗殺者が、組織の命令に背いて自分が死ぬことになっても、聖十字架の誓いを守って魂の救済を選んだのである。
私が「賢女の呪い」で感嘆したのは、永遠の青春の国ティル・ナ・ノーグでも賢女の呪いによる太古の神秘でもなく、キリスト教の聖十字架への畏敬描写だった。これは「ロリーとブラン」においても、人をだます詐欺師が諸聖人への誓いに畏れを抱き、誓いを守ったことにも継がれている。

主人公はキリスト教の天国にいけばティル・ナ・ノーグの神秘も全て明らかになると信じている。
願わくば、神よ赦しあれ、魂の救いあらんことを。
kirakira
kirakira
コメント
コメントの投稿










トラックバック
トラックバックURL
→http://kadasu.blog10.fc2.com/tb.php/2676-3cec7759
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
kirakira
kirakira
プロフィール

皇帝栄ちゃん

Author:皇帝栄ちゃん

クトゥルー神話、ロード・ダンセイニやアルジャナン・ブラックウッドの小説、一昔前の海外怪奇幻想小説、織田作之助、アシジの聖フランシスコなどが好きな這いまわる偽善者。
永遠属性持ち。ハッピーエンド至上主義。

東方は霊夢と早苗のカップリングがお気に入り。レイサナの道を歩む。キャラ単体では早苗さんが好き。



新刊「永遠のレイサナ」とらのあな様にて委託販売中。


■自作動画
東方MMD短編
東方MMDシリーズもの

メールフォーム

kirakira
kirakira
検索フォーム
kirakira
kirakira
月別アーカイブ
kirakira
kirakira
QRコード
QRコード
kirakira