kirakira
19:01:58
マーガレット・セント・クレア『アルタイルから来たイルカ』を購入。

サイズ変更ウィザード-3

表紙イラストに惹かれて買いましたが、これがまた面白かった!
話の語り手はアムターという歴史家のイルカ。この物語においてイルカは太古の昔に宇宙より飛来した植民者の子孫という設定。太古より何度かにわたり、イルカと人間のあいだにはお互いの領土(海と陸)を侵害しない「聖約」が結ばれてきたが、長い時の中で人間はそれを忘れてしまった。そしてアメリカ海軍が軍事目的で多くのイルカを捕らえて実験を繰り返すようになり、「聖約」を破られたイルカたちは仲間を救うため行動を開始する。イルカに協力することになるのは三人の人間で、「聖約」を思い出したヒロインの女性、感受性の強い元兵役の男、良くも悪くも話を大きく動かす心理学者の男。ストーリーはこの三人と数名のイルカたちによって進行する。個人的によかったのは、イルカを語り手に、ほぼイルカ側の視点で話が綴られること。つまり主人公側の場面だけで構成されているのでわかりやすいし読みやすい。
話の終盤で主人公たちはある装置を入手し、イルカたちのために北極の氷を溶かして地球の全容を変えてしまう行為をどうやるかについて悩みます。一気に氷を溶かすと大洪水で多くの人間が死ぬことになるので、ヒロインは誰にも気づかれないよう少しずつ溶かそうとする方法を提示します。しかし博士は、もし誰かに気づかれてしまったら終わりだから、一気にやるしかないと主張。そして博士はこっそり装置を持ち去り、それを実行したあと自殺します。結果、世界中で大洪水が発生し、15~20億の人類が死亡したうえ多くの国や都市が水没して地球上の様相は一変するラストになるのがすごいです。
私はよくいわれる「独善的な正義で人を消そうとするのは悪」という思考は大嫌いです。それこそ「ならば今すぐ人類すべてに理性を授けてみせろ」としかいえません。独善的な正義で多くの人間が死ぬことになろうとも、世界を変えるためならそれは誰かがやらなくてはいけない。この小説『アルタイルから来たイルカ』では、『逆襲のシャア』でシャアがやろうとしたことが、隕石落としよりは規模が小さいものの、肯定され、主人公側の行為によって人類の三分の一が犠牲になる終末と新世界への道が開きます。私はこの展開と結末に好感がもてます。
末尾で遠い未来に人間とイルカの天性は融合するだろうことが示唆され、「最上の時は、まだ来ていないのだ」という一文で締めくくられます。アシモフ『宇宙の小石』の末尾で引用されたブラウニングの「最良の日はまだ未来にある」を思い出しました。
kirakira
kirakira
コメント
コメントの投稿










トラックバック
トラックバックURL
→http://kadasu.blog10.fc2.com/tb.php/2986-9f43bb94
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
kirakira
kirakira
プロフィール

皇帝栄ちゃん

Author:皇帝栄ちゃん

クトゥルー神話、ロード・ダンセイニやアルジャナン・ブラックウッドの小説、一昔前の海外怪奇幻想小説、織田作之助、アシジの聖フランシスコなどが好きな這いまわる偽善者。永遠属性持ち。ハッピーエンド至上主義。

東方は早苗さん好きで、霊夢と早苗のカップリングがお気に入り。アイマスは橘ありす好きで、ありすと幸子のカプがお気に入り。


新刊「永遠のレイサナ」とらのあな様にて委託販売中。


■自作動画
東方MMD短編
東方MMDシリーズもの

メールフォーム

kirakira
kirakira
検索フォーム
kirakira
kirakira
月別アーカイブ
kirakira
kirakira
QRコード
QRコード
kirakira