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kirakira
20:54:12
文学フリマで頒布された渦巻栗さんの『万象奇譚集』+おまけ2冊と、花笠海月さんの突発クッキーアンソロ『クッキーについてはすべて理解した』を読了。

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渦巻栗さんの本はアルジャナン・ブラックウッドの未邦訳作品の翻訳本です。本邦初訳のブラックウッド作品が読めるのはありがたく嬉しい限り。

「いにしえの光」
土地調査員が奇怪な雑木林に閉じ込められて翻弄される話。登りかけた小さな門が動いて林の中へ放り込む箇所は絵面を想像すると喜劇的。林が動いて脱出を塞いだり、文字遊びのオチなどユーモアもある。
「サイモン・パーナキュートの奇行」
もと政治経済学の教授がふとした衝動から籠の中の鳥に心を奪われ、鳥を買って逃がしてやった。それを見ていた警官らしき男が教授のもとを訪れ、自然神秘の素敵な夜が始まる。普段は現実主義に閉じ込められている精神=魂の拡張と解放による自由、世界を飛翔するめくるめく体験。ブラックウッドの願望の一面を形にしたような話。読後感も非常によく、収録作の中ではいちばんお気に入りです。
「五月祭前夜」
魔術や魂を語る友人の民俗学者を論理でコテンパンにしてやろうとする物質主義の医者が、五月祭の前夜に丘陵で四大の精たちによる魔術的神秘的な体験をする話。前述の教授といい、『ケンタウロス』のシュタール博士もそうだが、現実主義の学者にも自然神秘の資質はあることが示唆されている。
「想像力」
『ケンタウロス』の一滴を調味料にした感じの掌編。なにしろ序盤で語られる概念はまさしく『ケンタウロス』のものであり、後半に出てくる浮浪者は『ケンタウロス』のラストで主人公を〈原初世界〉へ誘う浮浪者を意識させる。ユーモアのあるオチはご愛敬。
「海憑き」
これはどちらかというと怪奇小説的な味わいの話。海神を崇拝する船長が嬉々としてそれに連れていかれるのはクトゥルー神話的なものを感じてしまう。

ブラックウッドの自然神秘ものには、精神・魂の拡張と解放が強調される話が見受けられる。『ケンタウロス』がその頂点として、「秘法伝授」「エジプトの奥底へ」や、この本の収録作では「サイモン・パーナキュートの奇行」が顕著だ。また、これらにはその拡張を促す『大きな』人物が登場する。『ケンタウロス』のロシア人、「秘法伝授」のアーサーと曽祖父、「エジプトの奥底へ」のモールソン、「サイモン・パーナキュートの奇行」は〈世界警官〉の男といったふうに。
私はブラックウッドの自然神秘思想が形をとったそういう作品が大好きだ。


突発クッキーアンソロは「15時過ぎの憂鬱」と「ハゥ・トゥ・ゲット」がよかった。
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皇帝栄ちゃん

Author:皇帝栄ちゃん

クトゥルー神話、ロード・ダンセイニやアルジャナン・ブラックウッドの小説、一昔前の海外怪奇幻想小説、織田作之助、アシジの聖フランシスコなどが好きな這いまわる偽善者。永遠属性持ち。ハッピーエンド至上主義。

東方は早苗さん好きで、霊夢と早苗のカップリングがお気に入り。アイマスは橘ありす好きで、ありすと幸子のカプがお気に入り。


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